そうして思い出したんだ


きみとのキスが、いつもとても、哀しかったこと
そこにうたがあった
そこにひかりがあった
そしてすべてがなくなったとき
ぜんぶを含んだくちびるが
とてもつめたくて、とても、かなしかった


ゆるしてここに、あって


ゆるさなければ、その背中にさえも触れられなかった
きみが求めていたのは、存在の確認
きみが、ゆるされる人間 で あることの証人
わたしが居なくても、ゆるさなくても
笑って生きてはいたんだろうけれど


関わって おもって あいして ゆるして 
どれほどの幸福と、喪失と、を、繰り返したか
いまになって、いまですら、その名残で
たいせつなひとに ほんとうにおもわれているのか、どうか
信じることはできない、まま、
かなしく笑いながら生きているわたしを
きみもまた、愚かだと言ってわらうのだろう
それを罪だと言う、わたしのことばなどには、耳も貸さずに


思い出したんだよ
あのキスが、どれだけ哀しかったかを
涙が出そうになる
きみはもう、どこにもいないのにね。