2006-04-13 ■ 「ねえぼくの眼が どんどんかすんでいって この手に触れられるものしか見えなくなったとき きみは遠くまで行って そしてぼくに遠くの世界を持ってきてくれる?」 彼はそう言って、そうして 視界を殆ど失くしたが そうなってはじめて わたしが、その手に触れられない程遠くまで 行ってしまうことの恐ろしさを知った。 だから彼は もう遠くの世界を、その色を、景色を 手にすることはなく ずっとわたしの手を握り、安心したように眠っている。