なんておだやかなんだろう。
大事そうに抱えていたものを失くしたとたん
あたしは壊れるとおもっていた。


失くす心配がなくなった からっぽなあたしは
とてもおだやかに、別れの言葉を選んでいる。


失くそうとしたあの夕方がやってきて、
あたしを食べつくそうとするときに
そうして闇にとりこまれそうになったときに
そこで、駄目だとあたしに聞こえない声で叫んだって
もう遅いのだ。
きみたちは、ただ叫びたいだけだ。あたしに。
愛ではなくて、ただの正義を。そうしてあたしをころす。


あたしはそれを人形のまま受け止める。


魔物がたくさんいる。


こんなに正しくないあたしのこと、はやくやっつけてくれたらいいのに。